北朝鮮「偉大な愛」の幻 (上下)
書 評
本書は、世間をまどわすジャーナリストのお粗末な北朝鮮論とは、格段の違いを見せている。・・・
――和田春樹(東大名誉教授)、週刊読書人07年8月24日
なぜ、どうして、こういう国になったのか。・・・本著は、それを知るにふさわしい。上下二巻、読了に気力がいるが、分かりやすく面白い。まず、そこが凄い。・・・
――久田恵(ノンフィクション作家)、朝日新聞07年5月27日
在日経験も長い筆者が冒頭の「日本の読者へ」の中で訴えることばは我々日本人に重く響く。・・・
――春原剛(日本経済新聞編集委員)、日本経済新聞07年5月27日
ポズト・デモクラシー
書 評
英首相ブレアの「ニューレーバー」政策は企業からの支持を求めるあまり民営化や外部委託で公共サービスを商品化し、質を劣化させた。・・・市民であれば当然保持できる「権利としての公共サービス」という著者の考えは、日本でも十分傾聴に値する。
――小林良彰(慶応大学教授)、朝日新聞
クラウチはこのような経済の危機が、そのまま「大企業の権力支配」という現代政治の危機になっていると警告する。ここには「格差」の問題の本質がある。・・・今日の危機的な「ポスト・デモクラシー」の状況を明確に暴いた本書は、そこに描かれていることが暗いものであるにもかかわらず、読者に一種のエネルギーを与えてくれる。
――宇波彰(評論家)、公明新聞
自閉症の君は世界一の息子だ
書 評
・・・自分と異なる世界に生きる人をどう理解すればよいかという普遍的な問いが全編を貫いている。・・・父と息子がかすかに会話を交わし、希望を見いだすところで本書は終わる。感動的だが涙はない。・・・
最相葉月、ノンフィクション作家「朝日新聞」
「悲劇ではない。これがぼくの家族」と言い切る著者。物理学という世界に集中したニュートンを認めるならば、周囲にあるさまざまな物に執着し、列車の時刻表をそらんじる“ニュートン”も認めよう、ともいう。懸命にわが子という他者を理解しようとする姿勢が伝わる好著。成長と個性、幸福とは何か。社会の多様性について改めて考えさせられる。
――大橋由香子、ノンフィクション作家「福井新聞」
軍産複合体のアメリカ 戦争をやめられない理由
書 評
この本おすすめ。現在のブッシュ・アメリカを明快に「軍国主義国家」と言い切った市販本は(私の知る限り)はじめてだからだ。・・・これまで指摘されることが少なかった“軍産複合体の戦争”を熱烈支持している「草の根のアメリカ人」=福音主義のキリスト教右派とユダヤ資本(イスラエル・ロビー)の関係にスポットを当てているのも、すげぇ勉強になった。・・・
――吉田司、ノンフィクション作家「中日新聞」
世界「最強」の米軍をもってしても、自分たちの意思を他国民に押し付けることはできない。この真理が、これだけ明白になっているのに、なぜ米国は戦争をやめることができないのか。この問いへの答えの一つが、軍産複合体が今日の米国に及ぼす巨大な影響力です。・・・本書は、米国などでの最近の研究にもとづき、この問題を改めて解明したもの。・・・
――「しんぶん赤旗」
・・・軍産複合体を排除しない限り、「日本も米国の戦争に付き合い続けることになる」という警句は、対米追従を続ける日本に重く響く。
――「東京新聞」
・・・「イスラム世界を訪れて接する市井の人々の素朴な笑顔を思い浮かべると、彼らを犠牲にして、米国経済をうるおすために、戦争をすることがいいことだとは思えません」・・・
――「信濃毎日新聞、著者インタビュー」その他多数紙
新・学歴社会がはじまる 分断される子どもたち
書 評
・・・尾木氏が分析した結果分かってきたことは、教育にかかわるあらゆる部門、分野で、今、急速に格差が拡大してきているということでした。・・・この格差は、小泉前内閣をはじめとする、最近の新自由主義の経済、政治路線が生み出したものであることを尾木氏は強調します。・・・今こそ、この事実にしっかり向き合って、この路線と決別しなければ、子どもたちの悲劇は改善されるどころか、一層深刻になるだろうことを本書は説得力を持って示しています。・・・
――汐見稔幸・東京大学教授「しんぶん赤旗」
・・・著者はさまざまなデータと事例を用いて、格差拡大の現状を分析している。・・・著者の教育建て直しに関する政策提言は明確だ。弱肉強食の経済政策を見直し、習熟度別授業を廃止、学習内容の現場への権限委譲、手厚い義務教育への支援などだ。私も全面的に賛成だが、気になることは、これらがいまの政府の政策と正反対であることだ。
――森永卓郎(週刊ポスト06年12月22日)
9条がつくる脱アメリカ国家 財界リーダーの提言
書 評
立花隆「週刊文春、私の読書日記」
本書の白眉は、品川が京都三高時代、「軍人勅諭・読み替え事件」の顛末を語るシーン。・・・ヒトラー・ナチスドイツへの抵抗を呼びかけた有名な「白バラ運動」にも比すべき<軍国日本の白バラ事件>ではないか。このエピソードだけでも、本書を手にする価値がある。それだけでなく、北朝鮮の核実験から集団的自衛権行使に踏み込もうとしている安倍内閣のチェックにも役立つでしょう。・・・本書は「日本とアメリカは・・・基本的に価値観を共有している」と主張する安倍内閣「美しい国」の対極に立つ本だ。
──吉田 司(ダカーポ、06年12月6日)
中国戦線から奇跡的に生還、復員船のなかで日本国憲法草案を読んだ体験はいまも鮮やかです。軍産複合体が国を牛耳るアメリカと、平和憲法のもとで歩んできた日本とは価値観が違うはずだと問い、9条のもとでの日本の国家目標を示しています。82歳。「持てる力をふりしぼって」発言を続ける姿勢に圧倒されます。
──しんぶん赤旗 日曜版、06年11月12日号
ナチと民族原理主義
キャロル・グラックさん(コロンビア大学教授)
本書は迫力ある画期的労作だ。ドイツ国民が実際に信じた民族原理主義に基づくユダヤ人排撃の道徳体系。単にナチの悪と片づけられない。それがいかにして当時の知的エリートらによっても構築されたかを、恐ろしいほどはっきりと解き明かしている。
書 評
ナチの本質は、本書で明らかにされたような、余りにも凡庸な、大衆向けの疑似科学・哲学に彩られた、他民族を排除する民族原理主義であり、この思想は現代に至るまで、様々に形を変えて生き続けているはずである。
──三浦小太郎、諸君!
いかにしてホロコーストは可能となったのか。官僚や学者から教育者に至るまで、ナチ政権に荷担した人々の姿を描き出したナチ研究の傑作。本書が描き出す、良心の痛みを伴わず虐殺が行われるプロセスは、決して他人事ではない。
──坂野 徹、図書新聞2006年上半期読書アンケート
「うたかたの恋」の真実 ハプスブルク皇太子心中事件
書 評
皇太子の許されざる恋が死を選ばせた純愛物語というふうにこの事件は見られてきた。だがそれだけなのだろうか、という疑問から著者はこの事件の背景をたどり、単純なラブ・ストーリーではないことを明らかにしてゆく。それはハプスブルク帝国の滅亡に深く関わった,よりなまなましい人間ドラマなのだ。……〈うたかたの恋〉といったロマンティックなイメージでしか知られていなかったこの事件をあらためて歴史的に読み直す試みに、多くを教えられた。
──海野 弘(評論家)、日本経済新聞
本書は、この「マイヤーリング心中事件」の謎に深く切り込み、その「謎」によく迫ったばかりでなく、その考証をを通して、宮廷と社会、皇室と国家、個人と公人といった様々な問題を適切に投げかけてくれる快著といってよいだろう。……
──瀧田夏樹(東洋大学名誉教授)、週刊ポスト
坂を転げ落ちるように暗転するハプスブルク家の運命を描いたドキュメント。
──河北新報、ほか多数
歯はヒトの魂である 歯医者の知らない根本治療
有馬朗人さん(東京大学名誉教授、元文部科学大臣)
西原先生は名歯科医である。かつて私は、歯槽膿漏の末期で烈しい歯の痛みに悩まされた。こういう時、普通は抜歯するようだが、先生のていねいな治療で、ついに抜かずにすんだ。その方法はかなり独自のものであった。
渥美和彦さん(東京大学名誉教授、日本統合医療学会理事長)
西原克成さんは日本人離れしたスケールの大きな構想力の持ち主である。10年以上前に、セラミックスを使い、血流の流体力学エネルギーが筋肉細胞の遺伝子の引き金を引いて、骨芽細胞と血液細胞を誘導するという画期的手法を考案した。これによりハイブリッド型の人工骨髄造血器を開発して、日本人工臓器学会賞を受賞した。
その手法の一環である本書の人工歯根の開発は、これまで誰も思いつかなかった独創的な見事なもので、これからの歯科医療の飛躍を予感させる。
読者より
歯はこんなに大切なの、と思いました。口を全体からみる視点は、これまでの歯の本にはない視点です。岩波新書「歯の健康学」をこえた好著です。
──古田浩滋、公務員
西原先生の著作は、たいてい読んだので、その視点はほぼ分かったぞ、と思っていたところにこの本を知りました。またもや新しい事実を知りました。本当に西原先生はスゴイ!「医師なら今のうちに修得しておかないと」といってあげたい。
──下光博之
「二重言語国家・日本」の歴史
吉本隆明さん
石川九楊の書史論は、わたしには想像していた書論の次元を遥かに超えるものであった。筆圧の分布、筆速の波、右上がりの心理など、およそ優れた書家の実作の経験と、それにたいするミッシェル・フーコーのいわゆる「主体性の配慮」なしには解析が不可能なところまで「三筆」や「三蹟」などの書字を論じながら日本の書史が分析されていた。自己の書字にたいする経験的な省察と心くばりを深めていなければ、ここまで他者の書の深層まで到達させることはできない。
わたしは日本で文芸批評以外にはできていないという偏見をもっていたが、石川九楊の書の批評と書史の記述は、この偏見を見事に破ってくれた。何よりもそのことは、わたしには驚嘆すべき出来事であった。
書 評
「朝廷から武士への支配交代という従来の歴史では、さらりとしか語られてこなかった人間たちが、むくりと立ち上がってくる本。本書では、宋から亡命した、あるいは留学した禅僧集団が、当時の国際語漢語の使い手として、法律・外交・教育・日中貿易を担っていたという。単なる文化集団ではなかったのだ」
──朝日新聞
「ひさしぶりに凄い本に出合った。読みながら始終、動悸がしていた。珍しい体験である。……この壮大な二重言語国家の仮説は、具体的な書の分析を通しての実証的なものであり、説得力は抜群である」
──芹沢俊介、読売ウイークリー
「……漢と和の言語の二重性という視点に立って、著者はナショナリズムの起源の底が存外浅いことを指摘する。本居宣長は、文字としての「やまとことば」の起源を漢字到来以前と考えようとした。だがこの考え方は無理がある。唯一の日本文字である平仮名は漢字を基礎に万葉仮名を経て生まれたのであるから、著者はそう一蹴する。……」
──芹沢俊介、東京新聞
「……目のウロコはどっと落ちる。“書は人なり”が実感できる。一点一画が書いた人の中身を語ってしまう。おそろしいことでもある」
──藤森照信、京都新聞他多数
脳は出会いで育つ 「脳科学と教育」入門
養老孟司さん
小泉さんは私が尊敬する脳科学者である。その人が脳と教育というテーマに取り組むと知って、私はたいへん嬉しかった。それが大切だとだれでもわかっていて、なかなか本気でやる人がいなかったからである。この本を多くの人にぜひ熟読していただきたいと思っている。
書 評
本書に見られる幅広い視野と博識には、いったいこのような本が書ける人が他にいるだろうか、と思わずにはいられない。「脳科学と教育」についての定番というべき本になることであろう。
──加藤忠史(理化学研究所脳科学総合研究センター)、こころの科学
高齢者の喪失体験と再生
書 評
「世界一の長寿国になった幸せな日本。しかし、一皮むくと、認知症や寝たきり状態への不安が渦巻いている。長寿を喜びながら、老いを敵視している。この不思議なねじれ現象。ここに鮮やかな切れ味のメスを入れたのが本書である。私も70代半ばを過ぎて認知症を恐れる一人になっていたが、本書と出合って救われた。うれしい本である。……せいせいしたのは、老いは、社会的にも老いたる当人からも肯定されるべき自然、と位置づけられたことによる。老いは敵ではなかった。パートナーであった」
──増田れい子・ジャーナリスト、中国新聞
「寝たきりや認知症になっても、その人の尊厳が尊重されてこそ、成熟した高齢社会である、との指摘は共感できる。……老いを「若さの喪失」ではなく、真正面から真摯に生きてこそ、豊かな生を全うできる。示唆に富んだ「生き方論」である」
──聖教新聞